2019年10月8日以降の医療保険の経理処理について~節税ができなくなる?~

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はじめに

法人が契約者となって保険に加入した場合、その保険料をどのように経理処理(損金算入)するかは国税庁が制定する「法人税基本通達」の中に定められています。
実は、2019年6月28日にこの基本通達の改正が行われました。
その内容には医療保険(がん保険)に関係してくる項目が含まれており、2019年10月8日から適用されることになっています。
今回は、その内容について見ていくことにしましょう。

これまではどうだったのか?

これまで、法人の名義で短期払いの医療保険やがん保険に加入した場合、支払った保険料はそのすべてを支払い年度の損金として経理処理することになっていました。
この制度では、結果として利益を圧縮することにもつながることから、保険料が数百万円というようなケースでは、大きな節税効果があったわけです。

この手の保険でよく行われていたスキームは、被保険者を経営者や役員にしておいて終身タイプの医療保険やがん保険に加入。
数年~10年程度の短期間で保険料の支払いを済ませます。その後、被保険者が契約者となるように名義変更するというものです。
こうすれば、経営者や役員は終身の医療保険やがん保険の恩恵をほぼタダ同然で手に入れることができます。

また、先ほど述べたように会社にとっても納める税額を節約できるという効果があるわけですから、特に中小企業の経営者にとっては非常に「おいしい」保険として人気を集めていました。
また実際に各保険会社からも「福利厚生の充実」といった名目でこの手の商品が多く売り出されていました。

どう変わるのか?

今回の改正に伴い2019年10月8日以降は、定期保険および第3分野保険(医療保険やがん保険)の支払った保険料全額をその年度の損金として計上できるのは、その額が30万円以下(被保険者1人あたり)の場合に限定されることになりました。

そして、定期保険および第3分野保険(医療保険やがん保険)の当該年度に支払った短期払いの保険料が被保険者1人あたり30万円を超える場合には、その保険料の全額を資産として計上し、保険期間の経過に応じて損金として処理しなければならないことになったのです。

ここで出てくる
「保険期間の経過に応じて損金として処理」
とは、分かりやすく言い換えると、
「短期払いのように何年か分をまとめて支払ったとしても、損金として処理できるのはその期にかかる分だけですよ」
ということになります。
なお、終身タイプ医療保険やがん保険の「保険期間」は、「その保険期間の始まりの日から被保険者が116歳になる日まで」とすることになっています。

つまり、これまでのようにこの手の保険商品で節税効果を得ることは、ほぼ不可能になったということですね。

最後に

今回の改正内容に関しては、過去への遡及は行わないということになっています。
したがって、2019年10月7日以前に契約したものであれば、従来通り支払い保険料の全額を支払い年度の損金として処理できるということです。
なお、これ以外にも節税を目的とした保険商品については、金融庁が今後全面的な規制に乗り出すとの報道もなされており、今後の動きが注目されるところであります。

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