年金の受給開始年齢は遅いほうが得をするって本当?

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はじめに

最近、受取額が増えることを理由に年金の受給開始年齢の繰り下げをすすめる情報が目立ちます。
しかし、受給年齢を遅くしたからと言って必ず得をするとは限りません。
逆に大きなデメリットが生じてしまう可能性もあります。
詳しくは以下で説明します。

制度的には早めれば減額・遅くすれば増額

昭和の時代において定年退職の年齢は一般的に55歳でした。
ところが、1980年代以降、その年齢は段階的に引き上げられていき、現在では本人が希望すれば65歳までは働くことができるようになっています。

また、個人差はあるものの、昨今の高齢者の方はとても元気な方が多くなりました。
このせいか、定年退職してからも何らかの仕事に就く人の数が増えてきています。
このことは「ある程度の年齢になっても、それなりの収入を得ている人が多くなってきている」ということを意味します。

一方、公的年金の受給開始年齢は基本的に65歳です。
ただし、これは本人さえ希望すれば上限を5年として早めることも遅くすることもできます。
そして、早めた場合には受取額が減らされ(ひと月ごとに0.5%)、遅くした場合には逆に増やされる(ひと月ごとに0.7%)ことになっています。

本当に得をするとは限らない

「遅くすれば受取額が増え、おまけに、それまでの間自分で収入を得るための手段も持っている」となると、受給開始の年齢を繰り下げようという人が増えてもおかしくありませんよね。
実際にそれをすすめる声も少なくありません。

しかし、本当に得をすることになるのでしょうか?
たしかに平均寿命は伸びているとは言え、必ず80歳、90歳あるいはそれ以上の年齢まで元気な状態で生きられるという保障はありません。
もし、年金を受け取る前に亡くなってしまったり、受け取るころには寝たきりの状態になってしまったりしていたとしたらどうでしょう?
何のために繰り下げをしたのかわからなくなってしまいます。

歳をとれば使う額は減る

総務省が公表している家計調査報告(2020年度版)によれば、世帯主年齢が60代の二人世帯における消費支出額は平均でおよそ28万円(1ヶ月あたり)です。
一方、世帯主年齢が70歳以上になると、その額は約23万円となります。
つまり、年齢が高くなればなるほど、お金を使わなくなるというデータが出ていて、その差は約5万円にもなるのです。
お金をあまり使わなくなったころに、通常よりも多い年金を受け取ることにどれだけの価値があるのでしょうか?
このような事実も繰り下げを検討するときには考慮すべき点と言えるでしょう。

まとめ

ここまで見てきたように、受給年齢を遅くしたとしても本当に得をするかどうかはわかりません。
また、得をすることになったとしても、受け取るときにはお金をあまり使わなくなっていたり、あるいは使えない状態になっていたりする可能性もあります。
このように、受給年齢を遅くすることで逆に大きなデメリットが生じてしまう可能性もある点には注意が必要です。

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