- 2025-5-26
- 個人年金・年金

老後の生活設計において、公的年金に加えて安定した収入源を確保することは、多くの方にとって重要な課題です。その中でも、アパートやマンションといった不動産を活用した「家賃収入」は、比較的安定的かつ継続的な収益源として注目されています。しかし、年金と家賃収入の関係には、課税や社会保険との関係といった制度上の注意点も含まれており、正しい理解が欠かせません。この記事では、公的年金と家賃収入がどのように関係しているのか、制度的な視点からわかりやすく解説いたします。
目次
- 年金生活と家賃収入の両立は可能か
- 家賃収入は年金額に影響を与える?
- 年金と家賃収入の課税関係
- 国民健康保険料や介護保険料への影響
- 家賃収入を持つ際の管理上の注意点
- まとめ
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年金生活と家賃収入の両立は可能か
年金を受給している高齢者が、同時に家賃収入を得ることは法律上も制度上も全く問題ありません。むしろ、年金だけでは生活に不安がある方にとって、家賃収入は重要な生活資金となり得ます。実際、不動産を所有している高齢者の中には、定年後に安定収入を確保する目的で賃貸経営を始めるケースも少なくありません。自宅の一部を貸し出すケースや、相続で得た不動産を活用するなど、家賃収入を得る方法は多様です。
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家賃収入は年金額に影響を与える?
基本的に、家賃収入が直接的に「公的年金の支給額」に影響を及ぼすことはありません。年金は、現役時代の保険料納付実績に基づいて支給額が決まるため、老後に得た家賃収入によって減額されたり打ち切られたりすることはないのです。ただし、年金のうち「在職老齢年金(厚生年金を受け取りながら働く人に適用)」の場合、給与や事業所得などとの合計収入が一定額を超えると年金が調整される制度があるため、注意が必要です。なお、家賃収入は事業所得ではなく「不動産所得」に該当するため、通常この在職調整の対象とはなりません。
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年金と家賃収入の課税関係
一方で、年金と家賃収入には「所得税」の観点で重要なポイントがあります。年金も家賃収入も、いずれも「所得」としてカウントされるため、合計金額に応じて所得税が課せられる可能性があります。特に、公的年金は一定額を超えると課税対象となるため、そこに家賃収入が加わると税率が上がるケースも考えられます。年金の非課税限度額は、年齢や扶養の有無によって異なるため、年金と家賃収入の合算額に応じた正確な申告が必要です。
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国民健康保険料や介護保険料への影響
年金と家賃収入の合計所得が増えると、住民税の増加や、国民健康保険料・介護保険料にも影響が及びます。これらの保険料は、前年の所得を基に算出されるため、家賃収入があると保険料負担が重くなることがあります。特に75歳以上の後期高齢者医療制度の対象者にとっては、所得に応じて負担割合が変動するため、家賃収入が想定以上に影響を与えることもあり得ます。事前に市区町村の窓口や税理士などに相談することが望ましいでしょう。
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家賃収入を持つ際の管理上の注意点
家賃収入を得るためには、定期的な賃貸管理が必要となります。入居者との契約、修繕、税務申告などの手間が発生するため、年金生活との両立を考えると、管理会社の活用や親族への委託なども検討する価値があります。また、空室リスクや老朽化に伴う収入減少といった可能性もあるため、長期的な収支計画を立てておくことが大切です。不動産所得が一定額を超える場合には、青色申告特別控除の活用も節税手段として有効です。
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まとめ
年金と家賃収入の併用は、老後の生活をより安定させるための有効な手段となります。制度上は両立が可能であり、年金受給に対して直接的な制限はありませんが、課税や保険料負担の面で注意すべき点も存在します。家賃収入を得ることで所得が増える分、税金や保険料の負担が高くなることを理解した上で、適切な申告や管理を行うことが求められます。将来の生活に安心をもたらすためにも、年金と家賃収入を上手に組み合わせた「老後の資金計画」を設計していきましょう。