- 2025-4-22
- 個人年金・年金

離婚を考えるとき、財産分与や親権の話し合いはもちろんですが、見落としがちなのが「年金」の取り扱いです。特に長年夫婦として生活を共にしていた場合、一方の配偶者が専業主婦(主夫)であったり、パート勤務だったりすれば、将来の年金受給額に大きな差が生じます。そうした不公平を是正する制度が「年金の合意分割」です。この記事では、合意分割の仕組みや条件、その背景にある考え方までをわかりやすく解説いたします。
目次
- 年金制度と合意分割の関係
- 合意分割の基本的な仕組み
- 合意分割の対象となる年金
- 合意分割の手続きと注意点
- まとめ:公平な年金受給のために
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年金制度と合意分割の関係
日本の公的年金制度は、「基礎年金(国民年金)」と「厚生年金」から成り立っています。このうち、合意分割の対象となるのは厚生年金の報酬比例部分です。夫婦のどちらかが厚生年金に加入していた場合、その報酬に応じて将来の年金額が決まりますが、離婚時には一方の年金記録にのみ報酬が加算されることになり、専業主婦(主夫)だった側には年金が支払われないという不公平が生じていました。こうした状況を改善するために、2007年から合意分割制度が導入されたのです。
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合意分割の基本的な仕組み
合意分割とは、婚姻期間中に配偶者が厚生年金に加入していた場合、その期間の年金記録(報酬額)を離婚時に話し合いにより最大で2分の1まで分割できる制度です。たとえば、結婚して20年の間に夫が厚生年金に加入していたとします。その20年間の報酬に基づく年金部分を、離婚後に妻と夫で半々に分けるといった形です。分割は「合意」に基づいて行われるため、夫婦間で話し合いが成立することが前提となります。
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合意分割の対象となる年金
合意分割の対象は、あくまで厚生年金の「報酬比例部分」です。つまり、年収に応じて支給額が変わる部分のみであり、基礎年金(国民年金)は対象ではありません。また、自営業者や国民年金加入者だけの夫婦では合意分割の制度は適用されません。さらに、2008年4月1日以降に離婚した夫婦が対象となっており、それ以前に離婚した場合は原則としてこの制度を利用することができません。
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合意分割の手続きと注意点
合意分割を行うには、まず夫婦間で分割割合について合意し、それを文書にまとめる必要があります。次に、年金事務所に「年金分割のための情報通知書」を請求し、離婚成立後2年以内に年金事務所へ申請する必要があります。この「2年以内」という期限を過ぎると分割ができなくなるため、タイミングには注意が必要です。また、合意が得られない場合には、家庭裁判所での調停や審判が必要になることもあります。なお、合意分割によって年金が「現実に支給」されるのは、請求者が老齢年金の受給資格を満たしたときです。
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まとめ
合意分割制度は、婚姻中に年金を支える役割を担ってきた配偶者に対し、老後の生活保障を公平に分配するという社会的な役割を担っています。長年の夫婦生活においては、稼ぐことと家庭を守ることの両方が生活を成り立たせるために必要な要素であり、年金もそのバランスの中で見直されるべきものです。離婚は人生の大きな転機ではありますが、その後の暮らしを安定させるためにも、合意分割という制度の存在を正しく理解し、必要な手続きを検討することが大切です。