公的医療保険(健康保険)から労災への切替えについて

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はじめに

仕事中や通勤中に負ったケガや病気などは、労働災害であり、その治療に公的な医療保険である健康保険を使うことはできません。
この場合には、労災保険の制度を利用することになっているからです。
しかし、場合によっては、とりあえず健康保険で治療してしまったというケースもあるかと思います。
今回は、そのようなケースにおいて健康保険から労災保険へと切り替えるための手続きについて見ていきましょう。
なお、この切替え手続きに関しては、2017年2月に一部変更が行われていますので、この点についても説明します。

労災保険への切替え手続き

手続きは、医療機関が治療費(本人負担分を除く)を保険者(健康保険組合など)に「請求する前か、請求した後か」そして「受診した医療機関が労災指定病院かそうでないか」によって異なってきますので、それぞれについて説明します。
なお、2017年2月になされた一部変更の対象となるのは、後者の「保険者に請求した後または労災指定病院以外の場合」のケースです。

保険者に請求する前かつ労災指定病院の場合

この場合は、すでに支払った自己負担分の治療費の領収書を、受診した病院の窓口に提出します。
その際、仕事中の労災の場合であれば労災保険の様式第5号の書類、通勤中の労災の場合であれば様式第16号の3の書類を記入(一部は勤務先が記入、押印)して、同時に提出してください。
そうすれば、健康保険から労災保険へと切替えが行われ、自己負担分の治療費は返金してもらえます。

保険者に請求した後または労災指定病院以外の場合

受診した医療機関が労災指定病院でなかった場合や、労災指定病院であったとしても病院が保険者に治療費を請求した後の場合は、一時的に全額の治療費を負担し、後から労働基準監督署へ請求することになります。
この場合の手続きとしては、まず健康保険組合などの保険者に労災であったことを連絡します。

すると、納付書と医療費返納の通知書が送られてきますので、すでに支払い済み分(3割)を除いた治療費の残額(7割)を返納してください。
この時点で、いったん治療費の全額(10割)を自己負担していることになります。
その後、返納金の領収書が送られてきたら、自己負担分の領収書とレセプト(診療報酬明細書)の写しを、労災保険の様式第7号の書類(仕事中の労災の場合)または様式第6号の5の書類(通勤中の労災の場合)とともに、労働基準監督署へ提出します。
手続き後、労災と認定されれば治療費の全額が返金されます。

変更点

2017年2月からは、労災保険に切り替える際、保険者が負担した治療費(7割)を労働基準監督署から保険者へ直接に返還することができるようになりました。
これにより、労働者側が一時的とはいえ治療費の全額を負担する必要はなくなります。
ただし、この制度を利用するためには保険者の同意が必要であるほか、労働基準監督署へも委任状を提出しなければなりません。
また、3割の自己負担分に関しては、従来と同じく労働基準監督署への請求が必要です。
なお、従来通り、いったん全額自己負担とする方法を利用することも可能です。

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