年金財政健全化「財政検証」のオプション試算Aとは?

fa6c3ac3efa278ec646810fb19788f50_s

はじめに

年金運営の健全性を確認するうえで重要な「財政検証」
財政検証は5年に一度であり、直近では2019年には財政検証が行われました。
人口推移・経済成長の伸びがそれぞれ高位・中位・低位、計6つのケースで試算されています。
この試算が基となって年金改革は行われていくので、それらを見ることによって今後「どういった改革がなされていくのか?」と、おおよその推測をすることが可能です。

財政検証で示された試算とは?

2019年の財政検証の試算では大きく試算Aと試算Bの2つに分けられます。

Aは3つの条件で厚生年金の適用範囲を拡大した場合。
Bは保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択です。
具体的には、国民・ 厚生年金の支払い期間延長や繰り下げ受給時期の延長、在職老齢年金の緩和または廃止が試算されています。
AとBについて書きたいところですが、膨大な内容になってしまうので今回はAについてだけ書いていきたいと思います。

厚生年金適用範囲拡大

現状、厚生年金に加入するには、以下5つの条件をすべて満たさなければいけません。

・労働時間が週20時間以上
・月の賃金が8.8万円以上
・1年以上の使用が見込まれる
・従業員501人以上の勤務先で働いている
・学生でないこと

これらの条件を緩和・廃止し、適用範囲を拡大することによって「年金の給付水準を確保するうえで特に、基礎年金にプラスである」という結果が出ています。
基礎年金とは国民年金の受給分、厚生年金では2階建てのうち1階に当たる部分です。

緩和する厚生年金の加入条件と、それによる厚生年金加入者の増加試算は以下のようになっています。

1.企業規模要件(501人以上)を廃止した場合:125万人増
2.企業規模要件・賃金要件(月8.8万円以上)を廃止した場合:325万人増
3.月5.8万円以上の短時間労働者全体に適用拡大した場合:1,050万人増

なぜ厚生適用範囲拡大で年金財政が良くなるのか?

適用拡大で厚生年金に加入する人が増えれば、まず確実に企業の負担は増えるでしょう。
国民年金加入者が自分の財布のみで保険料を納めていたところを、企業が折半して負担することになるからです。
そして、その保険料は給料から天引きされるため、国民年金の未納率も減少します。
2019年の国民年金納付率は69.3%なのでさらなる改善が期待できます。

また、厚生年金加入者(世帯主)の扶養を受けている第3号被保険者は現在、国民年金保険料の支払いは不要となっています。
扶養の範囲内で月額賃金8.8万円を超えないように働いている層(主に主婦)が、厚生年金に加入し扶養の範囲を気にせず働くとなれば、年金財政への足しにもなりますし、被保険者にとっても将来もらえる受給額が増えます。

しかし、企業側の負担増や月額賃金5.8万円を超えないように扶養内で働くなどの懸念もあります。
財政検証で示された試算がどのように落とし込まれるのか、または、叩き台となってどんな良いものになるのか見守っていきたいところです。
おそらく近い将来、抜本的な年金改革が行われるでしょう。
試算Bについても今後機会があれば書きたいと思います。

関連記事

ページ上部へ戻る