- 2025-9-16
- 個人年金・年金

働き方が多様化し、転職や副業、フリーランスといったキャリア選択が一般的になってきた今、「年金ポータビリティ(移行性)」という考え方が注目されています。これは、職業や雇用形態が変わっても、これまでの年金加入実績を無駄にすることなく、適切に年金制度へ引き継げるようにする仕組みです。この記事では、年金ポータビリティの概要から、具体的な仕組み、注意点までをわかりやすく紹介します。
目次
- 年金ポータビリティとは何か
- 日本の年金制度におけるポータビリティの仕組み
- 企業年金からの移行とその課題
- ポータビリティを意識したキャリア設計
- まとめ
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年金ポータビリティとは何か
「年金ポータビリティ」とは、転職・退職・自営業などのライフステージの変化に応じて、年金の加入実績や資産を移行可能にする制度設計のことです。たとえば、会社員が退職してフリーランスになったり、公務員から民間企業に転職した場合でも、それまでに積み立てた年金が無駄になることなく、新しい年金制度へとつながっていくことを指します。
この概念は、雇用の流動性が高まる現代社会において、働く人の老後の保障を途切れさせないために必要不可欠な仕組みとされています。
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日本の年金制度におけるポータビリティの仕組み
日本では、国民年金(基礎年金)をすべての人が共通で持ち、職業に応じて厚生年金、公務員の共済年金、企業年金などが上乗せされる構造になっています。
国民年金と厚生年金の間は、自動的に加入履歴が連携されるため、転職によって制度が変わっても年金記録は一元管理され、将来の年金受給額に反映されます。たとえば、会社員が退職し自営業になった場合でも、国民年金に加入すれば過去の厚生年金の加入記録は維持されたままになります。
ただし、企業年金や確定拠出年金(iDeCo)などの私的年金については、制度によっては転職先に引き継げないこともあり、この点において課題が残されています。
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企業年金からの移行とその課題
企業年金制度の中には、転職先に制度がなければ移行できないものも存在します。たとえば、確定給付企業年金(DB)は、企業ごとに設計が異なるため、別企業への引き継ぎが難しいことがあります。
一方で、確定拠出年金(DC)は個人型(iDeCo)への移行が可能です。つまり、退職時に資産を自分名義のiDeCo口座に移し替え、そこから継続して運用するという方法が用意されています。ただし、移行手続きを怠ると「宙に浮いた資産」として扱われることがあるため、退職や転職時には制度の確認と移管手続きを忘れないようにしましょう。
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ポータビリティを意識したキャリア設計
これからの時代は、キャリアの柔軟性を高めると同時に、自分の年金資産の管理にも意識を向ける必要があります。たとえば、副業やフリーランスに挑戦する場合、自分で国民年金に加入し、さらに老後資金としてiDeCoやNISAなどで備えることが重要になります。
また、転職先の企業年金制度を確認し、自分のこれまでの資産がどのように引き継がれるのかをチェックすることも欠かせません。制度に応じた準備をしておくことで、将来の年金格差を防ぐことができます。
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まとめ
年金ポータビリティは、転職・退職・独立といった人生の節目でも、老後の備えを切れ目なく続けるための大切な考え方です。日本の公的年金制度では一定の連携が図られている一方で、企業年金や私的年金には注意すべき点も多く存在します。将来に備えて、自分自身の年金履歴と制度の仕組みを理解し、転職や退職時にはきちんと資産移行の手続きを行うことが大切です。