4割以上が未納? 年金の納付率を考える

f6f236dc55840b77a395d7311ce9cc6d_s

【はじめに】
老後や、病気や障害で働けなくなった時の備えとなる、年金制度。しかし、ときどきニュースなどで「日本の国民年金の納付率は60%、未納者が40%」などという話を聞きます。
また、こうした話を聞いて「4割もの人が未納なら、年金制度の将来性は危うい。払うだけ無駄」と考える人もいます。
しかし、それは本当なのでしょうか。
今回は、年金の納付率について考えたいと思います。

【年金納付率について考える】

1.国民年金の種類
本題に入る前に、国民年金の種類を説明します。
国民年金には、二種類あります。(もともとは三種類でしたが、2017年10月に厚生年金・共済年金が一元化されたため、現在は二種類となっています)

(1)国民年金
国民年金は、日本に住所がある20~60歳の人全員に加入義務がある年金制度です。
学生やフリーターであっても、20歳の誕生日を迎えると加入義務が発生し、年金手帳と払込票が届きます。
国民年金の加入者は、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者に分けられ、それぞれ支払方法が違います。

(2)厚生年金・共済年金
これらの年金は、会社員や公務員など決まった勤め先で働いている人のための年金制度で、国民年金と合わせて加入します。
会社員は厚生年金、公務員は共済年金に加入します。
これまで、厚生年金と共済年金には、受給額や保険料に大きな違いがあったのですが、近年は会社員と公務員の格差を是正するため、差が縮まってきています。

2.未納と免除の違い
前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。
ここでは,20歳~60歳までのすべての人に加入義務のある国民年金に絞って説明します。
先ほど(1)で、国民年金の被保険者は三種類に分けられると書きましたが、厚生労働省の年金納付についての調査によると、平成26年時点での加入状況は下記の通りとなっています。
・国民年金第1号被保険者(自営業、フリーター、無職、学生等) 1,742万人
・第2号被保険者(会社員、公務員) 約4,039万人
・国民年金第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている人) 約932万人
・加入者合計:約6,713万人

このうち、会社員や公務員などの第2号被保険者の場合、給与から保険料が天引きされるため、職場が税金を滞納していない限り納付していることになります。
また、会社員や公務員に扶養されている第3号被保険者も、支払ったものとしてカウントされます。
自分で払わない限り未納となってしまうのは、会社員や公務員ではない、学生、無職、フリーター、フリーランスの人となります。
年金の納付率が全体の60%と仮定すると、6,713万人×60%=4,027万人余。
およそ2,685万人の人が未納ということになりますが、実はその中には、一時的に特例免除を受けている学生や、きちんと手続きをして「免除」となっている人が約609万人も含まれています。
学生は、今は一時的に免除していますが、社会に出て働けば年金を収めることとなります。
また、年金に加入した上で所定の手続きをして免除をしている場合は「未納」とは違います。
免除者の場合は受け取れる金額は満額の半分となってしまいます。(ただし学生特例は別)
未納の場合は未納者本人が老齢年金や障害年金を受け取れなくなる仕組みなので、年金制度に影響はなく、未納者が損をするだけです。
それに加えて近年は、年金の未払い対策は厳しくなってきており、国からの通達を無視してゴネて払わないでいると、最悪の場合財産の差し押さえということもあり得ます。

【最後に】

今回は、年金の納付率について考えました。単純に「払っている」「払っていない」だけで見ると、納付率が60%というのは合っています。しかし、未納と免除の違いを考えると、この数値が必ずしも年金制度そのものに影響を及ぼすとは言いがたいのです。
また、「払っていない人が4割=制度が破たんする、払うだけ無駄」という考えに至る人が少なくないのは、免除手続きをせず「未納」状態の人もいざとなれば受給する権利が得られるという誤解があるためではないでしょうか。
未納では、年金の受給資格はありません。
どうしても、今は払えない事情があるなら、自分や家族の将来のためにも、免除手続きを行いましょう。
また、年金だけでは心もとないなら、自分に合った保険への加入を検討されてもいいかもしれません。

関連記事

ページ上部へ戻る